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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)1241号 判決 1951年8月17日

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役二年以上三年以下に処する。

第一審の未決勾留日数中一二〇日を本刑に算入する。

第一審の訴訟費用中弁護人江頭鉄太郎に支給した分及び当審の訴訟費用は  被告人の負担とする。

理由

福岡高等検察庁検察官検事長山井浩の上告受理申立理由及び之に対する弁護人双川喜文の答弁は別紙記載のとおりである。

被告人は、昭和六年一一月二二日生であって、本件第一審判決当時には、少年法六八条一項により「成人」であったのであるが、本件が原審に繋属中、同条第一項所定の期間が経過した結果、原判決当時においては、同法第二条所定の「少年」となったことは記録上明白である。原審は、被告人に対する第一審判決の科刑は重きに失するものとして、量刑不当の控訴趣意を容れて、第一審判決を破棄した上、刑訴四〇〇条但書に従っていわゆる自判したものであるが、新刑訴法における控訴審であっても、第一審判決を破棄して自判する場合には、その自判する時期を基準として、被告人に少年法を適用すべきや否やを決すべきものと解するを相当とするのであるから原審が右自判に当って、第一審判決時を基準として、被告人には少年法を適用すべきものでないとして、被告人に対して定期刑を科したのは、法律の解釈を誤ったものといわなければならない。従って論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないのであるが本件は訴訟記録により直ちに判決するを相当と認め刑訴四一三条但書に基いて、更に、次のとおり判決する。

第一審判決がその挙示の証拠によって確定した同判示第一、及び第三の各事実を法律に照すと、いずれも刑法二三五条(第一の各事実については、尚、同法六〇条)に該当するところ、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条一〇条に従い、犯情の最も重い判示第一の五の罪に法定の加重をなし、更に、少年法五二条一項、二項を適用し、その刑期範囲内において、被告人を主文の刑に処し、尚刑法二一条、刑訴一八一条に従い主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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